月刊「BASSER」連載
「そして、今日も僕はキャストする。」 第6話
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BASSER 8月号より
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バスを釣る方法はいろいろある。クランクベイトやミノー、ワームやラバージグ、最初見たときに何でこんな物に食いつくのかな〜と思ったスピナーベイト、そしてトップウォータープラグ。でも一番釣りやすい方法はエサ釣りだと思う。
もう10数年前になるが、バスセミナーの開始時間前にインストラクター数人とボート屋前のオダをワームで釣って遊んでいたときのこと。
アタリはあるが、なかなか釣り上げることができないでいた。
しびれを切らしたあいあん横山氏が、道路わきの溝からザリガニを捕まえてきて、これをエサにしてオダへ放り込んだ。すると瞬く間に食いついて見事釣り上げることができた。
それからはまさに百発百中、どこに入れても食いついてくるのには驚いた。
フロリダのガイドも、「絶対に釣らせたい時はエサを使うよ」と言っていたから、やはり1番はエサなのだろう(まあバスに限らずたいていはそうだが!)
そんなバスを、ニセモノのエサで何とか騙して釣り上げようと言うのだから、ルアーフィッシングはそれ自体ひとつの拘りではある。
私は、さらにそのなかのトップウォーターで拘っているのだから、釣れる確率はさらに悪くなっているに違いない。
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私はバス釣りを始めた最初からトップウォーターにのめり込んだわけではない。最初はクランクベイトやバイブレーションを多用していた。
トップに目覚めたあとも、ワームが入ってくればいち早く試してみたし、スピナーベイトも使い込んでいたし、ジグの使い方もよわからないながら芦ノ湖の岩影へ落とし込んで、結構釣ることができた。
とにかく、ひととおりすべて経験して「やっぱりトップが1番面白い」となったのである。
セミナーなどに出かけると、ときどき、「私はトップしかやらないので、ほかは知りません」と誇らしげに言う人がいるのだが、そんなとき、私は彼らに
「いろんな釣り方でバスを釣ってみたら? そしてトップが1番面白かったらトップオンリーになればいい。それが本物だよ」
と言うことにしている。バス釣り以外でもいろんな釣りを経験することで自分の持つ引き出しが増えるし、それが自分のバス釣りにおいてプラスに働くことも多いのだ。
私はトップウォーターにのめり込んできたのだけれど、ひとつの要素(トップウォーター)に拘ることの楽しさって何だろと考えたとき、それは自分のスタイル、自分の世界が作れることではないかと思う。
トップウォータープラグは基本性能も重要だが、使い手の意思や技量によってさまざまな動きを演出できるところが面白いのである。
たとえば、あの杭の右側からルアーを回そう、あのブッシュに沿って左に動かそう、今日は間合いを少し多く取ろう、あのブイのところでダイブさせよう・・・・など、誘い方は自分のさじ加減でどうにでも作れる。
そんな独自のパフォーマンスが思いどおりにできたときの満足感が気持ち良いのであるが(この境地に達するには時間が掛かるよ)、さらにこれに応えてバスが猛然と飛び出したら、もう最高!!
私の友人が「オシッコちびっちゃうよ」とよく叫んでいたが、そんな表現がピッタリなのである。しかも、この一連の出来事をそれを自分の目で見ることができるところがトップウォーターの醍醐味であり、面白さでもあるのだと思う。
で、このゲームをもっと満足のいくものにしようと突き詰めて行くと、使うプラグも重要になってくる。すなわち、使い手の意思に添って動いてくれる、動かしやすいプラグ。
そんな我々の要望を具現化してくれるのがハトリーズなのである。
ハトリーズはほかのプラグよりも水平に近いのはなぜ?
とよく聞かれたが、理由は羽鳥氏曰く
「棒浮木のように直立に近い角度で浮くものは、ときとしてイレギュラーに動いてしまうので、思いどおりの演出ができない。自分なりに納得のいくものを求めてこの姿勢になっている」
のである。
ペンシルかポッパーかスイッシャーかも好みがわかれるところだが、私はペンシルを多用する。
ペンシルがもっとも自分なりの個性ある動きを作れる反面、難しさも兼ね備えている気がして、いつになっても完成という事がない。そこが好きなのだ。
納得のいくプラグを手にすると、今度はロッド。
ラインスラッグをうまく操れる手馴れた人なら、少し先調子の硬いロッドでもトップウォータープラグを動かすことはできるのだが、我々の求めるものは、もっと踏み込んでプラグの機能を最大限活かせるもの。
だから、スーパーストライクのトップウォーターロッドは、魚を取ることよりも、滑らかに、艶かしく、滑るようにプラグを操れることを第一に考えて作られてきた結果、あの独特なアクションになったのである。
トップウォーターロッドといえばグラス、みたいなイメージがあるが、カーボンでもよいロッドは作れる。 たしかにグラス特有の粘りがプラグを動かすのにマッチしていると思うが、カーボンの軽さはとても魅力で、最近は歳のせいか1日中グラスロッドでキャストするのが辛く、カーボンロッドを多用している。
となると、今度はカーボンの利点を活かして、もっと粘りのあるアクションを持ったロッドが欲しくなる。 今はバスへのプレッシャーが20年前とは比べようもなく高くなっているから、オーバーハングの奥の奥へ入れないと出ない状況も多く、タックルの様変わりも求められる。それにはカーボンが有効ではないかと新たな意欲が沸いているところである。
今、こうして書いていることを読み直して見ると、ことトップウォーターに関しては、私を含めたスミスのトップフリーカーが、自分たちのスタイルや世界を具現化して市場にリリースしてきたのだと気づかされる。
これがスミススタイルと言われるゆえんなのだとも思う。
バスを取り巻く環境はよい方向へ向いているとは言えないが、私はこれからもトップウォータープラグを投げ続けるし、バス釣りに対する私たちのスピリットも決して変わることはないだろう。
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